朝はジャケット、昼は街歩き、夜は少しきちんとしたレストラン。そんな一日を一足の靴で過ごしたいとき、意外と難しいのが足元選びだ。ランニング系スニーカーではラフすぎるし、本格的な革靴では歩く時間が長い日に少し疲れる。そこで気になったのが、ベルルッティの2025年春夏コレクションに登場する新しい「プレイタイム」。白スニーカーという非常にベーシックなカテゴリーなのに、写真を見た瞬間から普通のコートスニーカーとは違う空気がある。派手なロゴで目を引くのではなく、革の表情やステッチ、かかとの色使いで静かに存在感を出しているところが、大人のワードローブにはちょうどよさそうだと感じた。
プレイタイム自体は2014年から続くモデルで、長く残っているだけあってシルエットはかなり落ち着いている。つま先が極端に丸くも細くもなく、パンツの形を選びにくいのがいい。私は白スニーカーを選ぶとき、単体で格好いいかよりも「スラックスの裾から見えたときに子どもっぽくならないか」をかなり気にする。その点、このモデルは上質なカーフレザーの艶があるので、白Tシャツとデニムのようなカジュアルな格好でも、足元だけ妙に軽く見えない。逆にネイビーのジャケットとグレーのパンツに合わせても、革靴から無理にスニーカーへ履き替えたような違和感が出にくそうだ。
今回のアップデートで個人的に一番ありがたいと思うのは、ソールの変更だ。高級レザースニーカーには、見た目は完璧でも実際に一日履くと底が硬く、夕方には足裏が疲れるものもある。新しいプレイタイムは軽量化だけでなく、柔らかな履き心地を意識し、さらに防水性を備えたソールを採用している。白い革靴系スニーカーは天候をかなり気にして履くことが多いので、足元側の安心感が増したのは現実的な改良だと思う。もちろんアッパーのカーフレザーまで完全に雨を気にせず使えるという意味ではないが、少なくとも「見た目だけのアップデート」ではないところに好感が持てる。
午前中に仕事関係の人とカフェで打ち合わせがあるなら、私はライトグレーのウールパンツ、白シャツ、ネイビーの薄手ジャケットにこのプレイタイムを合わせたい。バッグは黒かダークブラウンのレザーでまとめる。白い靴だけが浮きそうに思えるが、アッパーが滑らかなカーフなので、キャンバススニーカーよりもずっと端正に見えるはずだ。そして午後にジャケットを脱いで袖をまくれば、そのまま休日らしい雰囲気になる。こういう「服を着替えなくても場面をまたげる」靴は、実際の生活では出番が増えやすい。
デザインをよく見ると、ベルルッティらしさはかなり細かな部分に隠れている。特に印象的なのが、ソールとアッパーをつなぐ4本のハンドステッチ。伝統的なコインローファーのサドルから着想しているという背景を知ると、単なる装飾ではなく、革靴の文脈をスニーカーへ持ち込んでいることが分かる。普段ベルルッティ ローファーのようなクラシックな革靴を好む人がプレイタイムを見ても、急にスポーティーな方向へ振れた印象にならないのは、こうしたディテールのおかげだと思う。スニーカーなのに革靴好きの感覚をきちんと残している。
もう一つ好きなのがヒールパッチ。真っ白なスニーカーは清潔感がある反面、全体が均一すぎると少し無表情に見えることもある。プレイタイムでは、かかとにベルルッティらしいパティーヌ仕上げを取り入れ、艶とグラデーションで後ろ姿に変化をつけている。正面からはかなり控えめなのに、歩いたときに後ろから色の奥行きが見える。この程度のアクセントなら、ブランドロゴを大きく見せる靴が苦手な人にも取り入れやすい。一枚革をつまむことで立体感を出す「ガスパール」を思わせる造形も含め、近くで見たときに初めて気づく要素が多いのが面白い。
他ブランドと比較するなら、Common ProjectsのAchilles系はさらにミニマルで、服装を選ばない静けさが魅力。一方、Santoniのレザースニーカーは革の艶や仕上げが美しく、ベルルッティと同じく革靴好きに響きやすい。ただしプレイタイムは、パティーヌやハンドステッチによってブランドの革靴文化を明確に残している点が違う。Loro Pianaのスニーカーならもっと柔らかく上品で、リゾート感や抜け感を求める人には向いている。ベルルッティはそこまで力を抜かず、白スニーカーでも少し緊張感のある端正さを保っている印象だ。
品質面では、白いカーフレザーという時点で多少の手入れは必要だと思う。黒やブラウンなら小さな汚れが味になりやすいが、白はどうしても汚れが目立つ。それでも私は、多少履きジワが入り、真っ白すぎる状態から少し落ち着いてきた頃のほうが高級レザースニーカーは格好いいと思っている。重要なのは、汚れたら放置するのではなく、帰宅後に軽く表面を拭き、定期的に状態を整えること。スニーカーだから完全な消耗品として扱うというより、革製品として手入れする感覚が必要になる。
結局、このプレイタイムが買いかどうかは「白スニーカーにどこまで上質さを求めるか」で決まる。単純に歩きやすい白スニーカーが必要なら、もっと機能的で価格を抑えたモデルは数多くある。それでも、仕事帰りの食事、週末のホテル、旅行先のレストラン、ジャケットを着る休日まで一足でつなげたいなら、プレイタイムの立ち位置はかなり明確だ。私なら毎日雑に履く一足ではなく、きれいめな服を少し軽く見せたい日に選ぶ。白スニーカーを「カジュアルダウンの道具」ではなく、大人の服装を完成させるレザーシューズの一種として考える人なら、長く付き合える候補になりそうだ。